自然研究講座
生体機能研究室
教官
中山 匡 教授
研究内容
『高度好塩性古細菌
Halobacterium salinarum
に存在するカルシウム結合性蛋白質の生化学的・分子生物学的研究』
Halobacterium salinarum
(旧名
Halobacterium halobium
)は、海水の10倍程度の塩が存在しないと生活できない微生物です。この菌は、原核生物ですが、一般の細菌類とは異なり、DNA複製や転写などの基本的機構が、真核生物に近い性質を有しており『古細菌(アーキア)』と名付けられた生物群に属しています。
Halobacterium salinarum
を無機塩溶液の中に懸濁すると短時間に菌同士が集まって大きな塊を形成します。この集塊形成には、カルシウムイオンが重要な働きをしている事がわかりましたので、現在カルシウムと相互作用する菌の成分を探索しています。その結果、数種類のカルシウムに結合性を有すると思われる蛋白質の存在が確認できました。真核生物において、カルシウム結合性蛋白質は、一般的に情報伝達や細胞接着に重要な働きをしている事が知られています。この事から、古細菌のカルシウム結合性蛋白質がどのような機能を有しているのかは、興味のある問題と言えます。
現在、以下のテーマで研究を行っています。
・細胞表層に局在するカルシウム結合性蛋白質の分離・精製
・同上蛋白質の生理学的機能の解明
・他生物群に存在するカルシウム結合性蛋白質との構造比較
・凝集塊形成の生理学的意義
キーワード
高度好塩性微生物、環境変化、生物の体を構成しているタンパク質の種類、温度適応
使用している主な機器
二次元電気泳動装置(生物の体を構成するタンパク質を効率よく分離し、その性質を調べるための装置)
デンシトメーター(電気泳動装置で得た結果、得られた各タンパク質の量を測定するための装置)
画像解析装置(電気泳動装置で得た結果、得られたタンパク質の分離像を分析する装置)
高速液体クロマトグラフ装置(生物の体を構成する種々のタンパク質を効率よく精製するための装置)
ディープフリーザー(タンパク質試料を極低温(-80℃)で保存する装置)
ここ数年の卒論・修論の題名
halobacterium harobium
に存在するカルシウムイオンに依存した凝集因子について(1999年度卒業論文 伊藤竹織)
halobacterium harobium
に由来する凝集体の形態観察(1999年度卒業論文 江間瑞恵)
halobacterium harobium
の凝集体形成に対する二価金属イオンの影響(1999年度卒業論文 林 延大)
電気泳動法による
halobacterium harobium
構成蛋白質の解析(1999年度修士論文 平柳広美)
halobacterium harobium
の細胞膜に存在するカルシウムイオン結合成分とその働き(2000年度卒業論文 内山良介)
生体機能研究室卒業生の主な進路
研究開発:ジョンソン・エンド・ジョンソン、千寿製薬、神東塗料、おやつカンパニー、日本コルマーetc.
その他 :アストラゼネカ(MR)、中央出版(営業)、メナード化粧品(SE)、村上食品(食品管理)、コスモ技研(設計)、図書館司書(滋賀県)etc.
進学 :京都大学大学院、大阪大学大学院、神戸大学大学院、大阪府立大学大学院
奈良女子大学大学院、奈良先端科学大学院大学大学院、大阪教育大学大学院
2001年10月2日更新
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