アンタレス食
2005年3月31日の深夜0時から翌日1時台にかけて、さそり座の一等星アンタレスが月に隠されるアンタレス食が起こりました。
大阪教育大学宇宙科学研究室ではこの現象を天王寺キャンパスにて観測、撮影に成功しました。
観測はアンタレスが月に隠れる「潜入」、月から現れる「出現」の2回観測しました。

潜入時の動画 MPEG形式(3MB)
出現時の動画 MPEG形式(6.5MB)

潜入
潜入直前1

潜入直前2

潜入完了
出現
出現直前

出現1

出現2

潜入時は月の高度が低く、大気の影響で映像が揺らいで見えていますが、ゆっくりとアンタレスが 月に沈んでいく様子が観察できます。 出現時もアンタレスが出てくる様子がはっきりと観察できます。
はじめに比較的暗い天体が出現し、途中でいきなり明るくなるという2段階の増光が見られるのは、アンタレスの伴星が先に出現し、後からアンタレス本体が出 現したためです。主星のアンタレスAは実視等級0.9等の赤色巨星で、2.6秒角離れたところに実視等級5.4等の伴星アンタレスBが存在しています。二 つの等級差が大きく、距離が近いため小望遠鏡ではこれらを普通分離して見ることはできません。今回のアンタレス食では明るいアンタレスAが月に隠れてお り、先にアンタレスBが出現したために2段階の増光の観測に成功しました。
この映像から月へアンタレスが潜入、また月から出現した時刻を解析しました。

食はどうして起こる?

食は星ー月ー地球が直線上に並んだ時に星が隠される現象です。
月は約27日で地球を一周しますが、これは天球上を一日に約13.5度のペースで移動していくことになります。
これにより月の通り道にある恒星は月によって隠されてしまいます。この現象が食です。
また一ヶ月経つとアンタレス食が見られるかというと、そうとは限りません。
月の運動は複雑で月の天球上の通り道は毎回異なっているからです。

食から何が分かる?
アンタレス等の明るい恒星が月に隠されるという現象はあまりありませんが、それよりも暗い恒星が月に隠されるという現象は実は頻繁に起こっており、星食と呼ばれて世界中で観測が行われています。
この星食が起こる時刻を調べることによりいろいろなことが分かります。
正確な観測地と星食時刻を調べることによって月の正確な位置を知ることができ、これにより星の座標を与えているヒッパルコス星表の誤差を求めることができます。
また、たくさんの場所で星食を観測すると、月の地形を求めることができます。


参考リンク

2005年3月31日アンタレス食:国立天文台